“春の沖島”
 令和3年度版

 厳しい冬が過ぎ、小アユ漁やフナ漁が始まると、
“沖島の春”到来です。
 沖島の春は、島の所どころに桜が咲き、山では“蕨”“筍”“よもぎ”などの山菜も採れたり・・・とのんびりとした懐かしい春の風景に出逢えます。
 令和3年・春の話題

 今年も沖島に暖かな春がやってきました。この冬は積雪があったり、“琵琶湖の全層循環”も起きるなど、冬らしい冬を過ごしました。3月に入り寒暖差は激しいものの、暖かな日が多くなり、今年も全国的に桜の開花が早かったように、沖島でも昨年より更に早く桜が咲き始めました。3月下旬頃には七部咲きほどになり、満開になる木も見られ、今年も見事に島を桜色に染めてくれました。
 昨年春の「緊急事態宣言」から一年が過ぎ、未だコロナ禍による不安な日々は続いておりますが、全国的にワクチン接種が開始され、沖島でもワクチン接種が始まりました。高齢者の多い島にとっては、春到来とともに少し安心できる日々が届いたようです。そんな春の沖島からこの春の話題をお届け致します♪

 今年の春の漁は…

“塩切り鮒の仕込み”
 今年も暖かな春の到来とともに漁も春の漁へと移り変わってきています。
 3月に入り“ニゴロブナ漁”が始まった頃は、“スジエビ漁”を除いて、どの漁も好調なスタートとなりました。ここ2、3年不漁続きだった“ニゴロブナ漁”も好調で、毎年恒例となりました「ふなずし手作り講習会」で用いる塩切り鮒用のニゴロブナは3月下旬の時点で必要量をほぼ確保できています。また鮒の状態も大きいサイズのものが獲れており、卵の抱え方も良いものが確保できました。好調続きの“ホンモロコ漁”も大小サイズのばらつきがあるものの、引き続き好調でした。「大小ばらつきがある」ということは、ホンモロコは「年魚」ではないことから、ふ化して1年目のもの、2年目のもの・・・と成育状況の層が厚いことを示しており、このことは資源の回復の兆しを実感させることでもあります。また、買取業者により買取量や単価が低く抑えられた状態が続いておりましたが、このところ単価は安いものの獲れたもの全部を引き受けてくれるようになり、流通のほうでも少し明るい兆しを感じております。
 このように今年の春の漁は好調なスタートとなっていましたが、4月に入ると風が強く時化のため漁に出られない日が多くなり、4月4日に降った大雨を境(9日時点)にどの漁も不漁となってしまいました。幸い、「塩切り鮒」にするニゴロブナは、不漁となる前に予定していた量を100%確保できていたため、「ふなずし手作り講習会」や「塩切り鮒予約販売」などに影響はありませんが、これから“釣りエサ”として需要が増えてくる「スジエビ」の不漁は深刻で、例年は春分の日を境に浅瀬で獲れるようになるのですが、今年は数十年来、記憶にないくらい獲れていません。このような状況の原因として考えられるのは、湖魚の性質が挙げられます。湖魚は水温に応じて生息地域を変えます。湖魚の中でも春から初夏にかけて産卵する温水魚は、冬場は湖底のほうに固まって生息し、水温が上昇してくると産卵を促され、産卵のために「つがい」となって浅瀬に上がっていきます。それにより、群れがばらけてしまい魚群のポイントがしぼりづらく、一度に網に入る量も少なくなってしまいます。ニゴロブナ、ホンモロコなどは正にこの温水魚にあたり、4月4日の大雨が例年より早く琵琶湖の水温を上げたことや、風の強い日が多く風が強まると湖の水流が早くなることなども加わって、漁がしづらくなりこの状況を招いたのでは…と思われます。

“小アユ漁の漁船”
また、この時期は「漁法の過渡期」でもあります。冬場は湖魚が湖底のほうに生息していることが多いため“沖びき網漁”という底びき網漁が主ですが、水温が上がり湖魚が浅瀬に上がってくると漁がしづらくなるため、“刺し網漁”へと移行していきます。この頃から沖びき網漁では漁がしづらくなってきたため、ニゴロブナ漁などから徐々に刺し網漁で行われる“小アユ漁”に移行する漁師が増えてきており、このことも水揚げ量に影響を及ぼしていると思われます。
 このような経過をたどり、4月下旬にはニゴロブナ漁などの沖びき網漁からほとんどの船が刺し網漁の“小アユ漁”へと切り替わっています。その“小アユ漁”は好調な滑り出しで、晴天の日などはかなりの水揚げが上がっています。これから初夏にかけて最盛期を迎えますが、この先の水揚げにも期待できそうです。しかしながら、その逆の状況となっているのが“スジエビ漁”で、3月に入って獲れなくなって以来、引き続き不漁が続いており危機的な状況となっています。このスジエビ漁も沖びき網漁で行っていましたが、獲りづらくなったことや5月1日から法律の規制により沖びき網漁が禁止となることもあり、「たつべ漁」に切り替えましたが獲れない状況は変わりません。原因として推測されるのは、今年はこの時期の雨量が多かったことから琵琶湖の水位が上がったことに加え、川の水温もこの雨量により早く温められたことから、産卵場所を求め、私たちが思っている以上の浅瀬(水深10〜20cm)までスジエビが移動してしてしまっているのでは…ということです。
 ここまで春の漁の様子をご紹介してまいりましたが、琵琶湖の様子も、春を迎え、冬から春へと移り変わって来ました。この冬の雪解け水や雨量が多かったためか、この春は例年に比べ水位が高い(基準値から+7cm)ようです。この水位は基準値から−20cm以下になると生態系に影響が出始めるとされており、水位が高いことは湖魚にとっては良い状況となっています。また例年のこの時期より気温が高いこともあってか、水温も例年の平均水温より1℃高い(3月下旬時点)そうです。
 春の到来とともに漁も琵琶湖の様子も変わってきていますが、変わらないのは、未だ終息の見えないコロナ禍の影響で沖島の漁業にも大きな影を落としています。春から初夏に旬を迎える“小アユ”においても、今のところあまり売れておらず、今までのような需要が見込めないのが現状で「獲れても売れない」という状況になるのでは…と懸念しております。沖島漁協ではこれまでも“琵琶湖の恵み”の魅力を多くの方に知っていただけるような情報発信などに努めて参りましたが、より一層、解決策を見出すべく引き続き取り組んで参りたいと思います。

“あゆ山椒入り若煮”
 沖島の“えび豆”
“本もろこ若煮”

※ ご自宅でお気軽に湖魚の佃煮など“沖島家庭の味”を楽しんでいただきたく、沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では通信販売も行っております。ぜひ、ご利用くださいませ。
 詳しくはこちら・・・通信販売「沖島“家庭の味”宅配便」


 “後継者不足”に明るい話題♪・・・続編です 
 昨年の「春の話題」としてご紹介した“後継者不足に明るい話題♪”の続編です。
 沖島に移住されてきた青年が“沖島の漁業に興味がある”ということで、漁協組合長のもと、短期研修を受けられ、その後、国が行う研修制度に参加してから早一年が過ぎました。日曜日以外ほぼ毎日、組合長とともに漁に出て、一緒に「スジエビ漁」を営んでみえます。漁にもだいぶ慣れられ、今後が楽しみな状況です。この研修生のことは『世界ふしぎ発見』の取材を受け、5月頃放映される予定です。
 そして、今年の春はもう一つ楽しみな出来事があります。この春、“沖島生まれの沖島育ちの研修生”が誕生いたしました。高校卒業と同時に長期研修(研修制度)の前提となる短期研修を終えて、前組合長の下、3月1日から研修制度に参加し頑張っています。大人になり島を出て行く若者が多い中、こうして、また一人、沖島の漁業に興味を持ってくれる若者が増えたことは大変嬉しく、今後の励みになります。
 「漁業」という仕事は、自然の営みの影響を大きく受け、人間にはコントロールしきれない厳しいものでもありますが、だからこそ実感する喜びや手応え、そして自然の恵みの尊さなど、技術とともに伝えていけたらと思います。研修制度は3年間という長期研修になりますが、晴れて漁師となり沖島漁協の組合員として活躍していただけることを願い、出来る限りの支援をしていきたいと思います。そして、これからもこのような明るい話題が続くよう、漁協として『後継者育成事業』にも力を入れて取り組んで参りたいと思います。


 今年も沖島が桜色に染まりました♪
 昨年に引き続き、今年もコロナ禍に配慮し『沖島 桜まつり』の開催は見後らさせていただきましたが、桜の開花とともに沖島は桜色に染まりました♪
 今年の桜の開花は昨年より更に早く、3月下旬頃には七部咲きほどになり、木によっては満開を迎えているものもありました。4月に入ると島全体が桜色となり、一週目の金・土曜日には多くの方々が来島され満開の桜を楽しんでみえました。今年は夕方になると風が強くなることが多かったので、満開の桜と同時に桜吹雪も楽しんでいただけたのではないでしょうか♪
 今年も「桜まつり」は開催致しませんでしたが、湖島婦貴の会では“春の限定メニュー”をご提供させていただきました。「花弁当」と「沖島桜もち」をセットにした「花弁当セット(予約)」をはじめ、「沖島産の天ぷら」など、沖島の春を感じていただける品々をご提供させていただきました。

“にごろの煮付け”
どれもご好評をいただきましたが、その中でも「ビワマスの煮付け」の代替メニューとして出させていただいた“新作「にごろの煮付け」”は、多くの方からご好評をいただき、感謝申し上げるとともに今後の励みをいただきました。
 昨年、新型コロナウイルスの影響により『沖島桜まつり』を中止し、「来年(R3年)は桜まつりを開催できますように・・・」と願ってきましたが、今年も開催できなかったことは、とても寂しく残念に思っております。そのような中でも、沖島の桜は今年も変わらず見事に咲き、島を桜色に染めてくれました。そして、この不安な日々を送る島民を癒し、和ませてくれたこと・・・自然の営みに感謝です。


島の西側“桜トンネル”
 未だ、コロナ禍という不安な日々は続いておりますが、気候が良くなり沖島も観光に見える方々が多くなってきています。現在、感染対策として沖島通船にご乗船される前の検温・手指のアルコール消毒・マスク着用を実施しておりますが、島内でも来島者の皆様、島民が安心・安全に過ごせるよう、感染対策にご協力・ご理解をよろしくお願い致します。そして、来年こそは『沖島 桜まつり』で、沖島の桜とともに沖島の郷土料理で皆様をおもてなしさせていただけることを願っております。
※ 今年の桜の様子は下記の「春の風物詩−沖島の桜」でも、
 ご紹介しております。

 テレビ番組『世界ふしぎ発見』で沖島が紹介されます♪ 
  テレビ番組『世界ふしぎ発見』で沖島が紹介されます♪
 先日、『世界ふしぎ発見』のスタッフの方々が取材に見え、一緒に漁船に乗り漁の様子を取材したり、漁協婦人部“湖島婦貴の会”や島の様子を取材して行かれました。放映は5月中頃になるそうで、番組担当者によりますと沖島の取材内容がとても面白かったそうで、どんな仕上がりになっているか今から楽しみです。ぜひ、ご覧下さいませ。

〜〜春の風物詩〜〜〜〜〜 ここからは例年の“春の沖島”の様子をご紹介しております
小アユ漁
 小アユ漁は、“細目小糸漁”とよばれる刺し網漁で4月ごろから盛んになります。沖島では、刺し網にかかった魚を独特の方法ではずします。漁船に高く組まれた足場に網を掛け、その網を振るって魚をはずすのです。他で見られることもありますが、この方法は沖島発祥の方法です。そのため、この漁が始まる頃になると、漁船に高い足場が組まれはじめ、まさに沖島の春到来を告げる風景といえます
 また6月の決められた期間ですが、今はあまり行われない“沖すくい網漁”も行われます。沖すくい網漁とは漁船の舳先にとりつけた大きな網で、アユの群れごと、すくい取る漁法です。熟練を要する漁法です。
塩切り鮒の仕込み

 “塩切り鮒”とは「ふなずし」の材料となるもので、春に獲った琵琶湖産の天然“ニゴロブナ”を丁寧にウロコと内臓を取り、3ヵ月程度塩漬けにしたものです。このころの鮒は卵を抱えており、「ふなずし」の中でも特に美味とされています。
 毎年、春が来ると、“塩切り鮒”の仕込み作業が始まります。水揚げされたばかりのニゴロブナを傷つけないように仕込むのは、とても手間のかかる作業ですが、美味しい「ふなずし」を作るには、手の抜けない重要な工程のひとつです。

  “内臓部分は、卵を傷つけないように、えらのところから取り出します。”

 
 
“塩切り鮒”の予約販売を行っています。
 詳しくは、こちらの
“ここをクリック””を
ご覧ください
 
沖島の桜
 沖島の桜の開花は、少し遅めで毎年4月に入ってから咲き始めますが、今年も昨年同様、全国的に桜の開花が早かったように沖島でも3月下旬頃には七部咲きとなり満開となる木もありました。(撮影日:R3年3月29日)
 島では、あちらこちらで桜が楽しめますが・・・特に西福寺を抜けて島の西側の桜並木は見事です。またケンケン山の登山道にある“お花見広場”では、お花見をしながら比良山系・比叡山を望む景色が楽しめます。
沖島春祭り

 沖島では毎年5月に“春まつり”が行われます。昔から島民が集う行事のひとつで春まつりの頃になると、島から離れて暮らす家族がみな集まり、お正月さながらの賑わいになります。
 お祭りは、前日の夜の“宵宮うつし”から始まり、島の神様“瀛津島神社”の本殿にお祭りするため、神輿倉からお神輿と太鼓を持って上がります。 次の日の祭り当日、14時頃からお神輿を担いでお宮さんから下がり、町内をねり歩き、神輿倉へと向かいます。昔は、天気が良いとお神輿を船に乗せ休暇村まで往復しましたが、最近は安全に配慮して行われなくなりました。
 こうして、16時頃には神輿倉に収め、公園では“なおらい”が始まります。
 昔から春のお祭りになると“ゆぐみだんご”を作ったり、沖島で採れた山菜、筍を使って“煮しめ”を作ったりして家族みんなでいただきます。“ゆぐみだんご”とは、餡の入ったよもぎだんごのことで、沖島の昔ながらの呼び名です。
 また、最近は祭りの次の日に子ども会の呼びかけで、“ケンケン山”へ登り、昼食会をする催しも始まりました。
 このように、昔とは少しずつ様変わりしながらも、沖島の大事な行事のひとつとして受け継いで行きたいと思います。

〜〜春の味覚〜〜〜〜〜
“小アユ”
 琵琶湖のアユは、春に琵琶湖から川をのぼって大きくなるアユと、琵琶湖で生活して大きくならないアユがいます。大半はこの大きくならないアユで、小アユと呼ばれ、春に漁の最盛期を迎えます。
 小アユは、佃煮として食されるのが一般的ですが、島では、天ぷら、唐揚げ、南蛮漬けなどにしても頂きます。小ぶりなので骨が柔らかいのは元より、アユ独特の風味もしっかり味わえる逸品です。
※小アユの佃煮(若煮)は漁協会館前の「湖島婦貴の会」屋台または通販でお買い求めいただけます。
“鮎山椒入り若煮”
“山菜・たけのこ”   
 沖島では、“山菜”は4月から、“たけのこ”は5月頃から出始めます。
 「煮物」にして頂くのが一般的で、山菜に小芋・ニシン(または油揚げ、棒だら)・たけのこ・ふき・赤こんにゃくなど5品くらいを一緒に炊いて頂きます。
“蕨(わらび)”
“よもぎだんご”
 沖島に自生している“よもぎ”を摘んで作ります。中は餡子の丸いおだんごです。また、“さとだんご”と言われるもち粉によもぎと黒砂糖を入れて練ったおだんごも春の沖島の味です
《参考文献》
・ 「琵琶湖の幸 読本」 平成19年9月発行 滋賀県漁業協同組合


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