“秋”の沖島      R5年版


 “地蔵盆”が過ぎ、わかさぎ漁が始まると、
そろそろ秋の気配を感じ始めます。
 沖島の秋は湖の恵み・山の恵みと、まさに
“実りの秋”です。また秋祭り等の行事が行われ、様々な恵みに感謝をする季節でもあります。
 そんな“秋の沖島” に足を運んでみませんか・・・♪



  令和5年・秋の話題
 今年は10月に入っても全国的に気温が高かったように、沖島でも例年に比べ気温が高い日が続き、暦の上では秋でも秋らしさを感じることなく11月を迎えました。11月中旬頃から各地で急に寒くなったように沖島でも急に寒い日が多くなり、秋を楽しむ間もなく冬を迎えようとしています。
 今年の沖島の紅葉は、この夏から続く異常気象の影響か、例年より時期がずれ、漁港の桜並木などの桜の木は色づく前に多くの葉が落ちてしまったような感じでしたが、沖島神社の紅葉や山間などは11月中旬頃から色づき始め、今年も束の間の秋を感じることができたように思います。
 そんななか、今年も秋恒例の行事である「沖島学区運動会」や「沖島学区文化祭」も開催され、また昨年に続き開催したイベント『おきしまるしぇ』には400名余りの多くの方々にお越しいただき、活気あるイベントとなるなど、日常の復活を喜べる秋でもありました。
 しかしながら、その一方では、この夏から続く異常気象による「季節のずれ」が今後の琵琶湖の環境にどのような影響をもたらすかが懸念される秋でもあります。現にこの秋の漁を通しても「季節のずれ」による影響を感じ始めています。
 今年は暖冬になると言われていますが、これから迎える冬がこの「季節のずれ」に翻弄されることなく過ごせることを願いつつ、冬の足音も聞こえ始めた沖島から、いくつかの話題をお届け致します♪

 今年の秋の漁・・・季節のずれを感じます

 今年もビワマス漁や小アユ漁が例年通り禁漁期間に入るなど漁も夏から秋の漁へと移り変わってきました。しかしながら、暦の上では秋となりましたが漁の状況は例年の秋より少しずれているように感じております。琵琶湖の水温も10月に入っても気温が高い日が続いたためか平年より1〜2℃高かったことから、例年とは湖魚の行動パターンが変わるなど漁にも影響が出てきています。

“わかさぎ若煮”
 今年の“ワカサギ漁”は、9月前半頃から獲れだし10月前半頃までは順調でしたが、11月中旬には季節の変わり目に入ったためか獲りづらい状況となり、水揚量は減りましたが資源的にはいると思われます。例年、わかさぎ漁は8月後半くらいから始めますが、今年は小さすぎて商品価値が低く業者も引き受けないことから、9月に入って4〜5cmほどに成長し重量も3〜4倍になるのを待って漁を始めるという状況でした。この状況はこの夏の猛暑から10月まで暑い日が続いた“季節のずれ”により、プランクトンの発生時期にもずれが生じるなど琵琶湖の生物にも影響がでており、わかさぎの成長時期のずれにもつながったものと思われます。また、この季節のずれにより平年の同時期より水温が1〜2℃高かったことから、わかさぎの行動パターンも例年とは変わってしまい、現時点の獲りづらい状況につながっていると思われます。

“えび豆”
 同様に“イサザ漁”も獲りづらい状況のため水揚量は少ないものの、資源的にはいると思われます。また、“スジエビ漁”も例年のように獲りづらい時期には入っているのですが、今年は例年より更に獲れていない状況にあり、沖びき漁では、ほぼゼロの状態(11/21時点)です。しかしながら、ウロリ漁の時期にプランクトン状態のスジエビを多く確認していることから資源的にはいると思われます。
 このように魚種を問わず共通して「資源としてはいるものの獲れない」という状況は、この夏から続く異常気象により琵琶湖の環境が変化したことから、例年とは湖魚の行動パターンがずれてしまい、湖魚の行動が読めなくなっていることに起因しています。このことは、今年だけに限らず最近の琵琶湖の漁業に現われていることで、長年培ってきた経験だけでなく、その年ごとの状況に漁師自身が合わせれるかどうかで結果がかわってくる・・・それが今の琵琶湖の漁業です。

“本もろこ南蛮酢漬け”
 一方、“ホンモロコ漁”では11月中旬過ぎの急激な気温の低下で、湖魚が湖底に沈み(移動)沖びき漁に入るようになりました。この時期の行動パターンからしては珍しいことで一度に20kg近く入ることもあり、豊漁といえる状況です。このまま順調に気温が低下し水温も低下してくると湖魚は湖底に住処を移すため集団が形成され漁もしやすい状況となってくるので、ホンモロコのみならず他の湖魚の水揚げにも期待したいところです。


“ヒウオ(アユの稚魚)”
 12月からは11月まで禁漁期間となっている“小アユ漁”が“ヒウオ漁”として再開されます。この漁は養殖用、放流用の種苗としてアユの稚魚を獲るのが目的であり、養殖業者からの注文など今年の需要に合わせて漁獲量が計画されます。アユの稚魚は体が透きとおって見えることから“ヒウオ(氷魚)”と呼ばれています。今年は春からの“小アユ漁”が危機的な状況だったことから結果的には平年の7分の1の量しか獲れず、小アユは人気があり一定の需要があるのですが、それを賄う量にも満たない状況でした。例年の“小アユ漁”が漁として成り立つには、天然による産卵と人工河川による産卵と合わせて80億粒の卵が必要だと言われています。琵琶湖の水を汲み上げて作った人工河川に養殖や簗(ヤナ)で獲ったアユを放流し産卵を確認したのは35億粒で、80億粒を満たすには天然によるものが40〜50億粒必要となりますが、今年の「親アユ」が少ない状況から40〜50億粒の産卵は見込めないのではと思われ、今年の“ヒウオ漁”は厳しいものになるのではと懸念しております。
 このような秋の漁の状況や今年の春・夏の漁の状況からも今年の異常気象が琵琶湖の漁業に与えてきた影響は大きいと感じております。また、今年は季節を通して全般的に雨が少ないうえ、台風などによる大雨に見舞われることもなかったためか、長期間に渡って琵琶湖の渇水状態が続いており、これも今年の異常気象によるものだと思われます。また琵琶湖は「琵琶湖総合開発」の取り決めにより京阪神に水を供給しているため、このまま雨量が少なければ更に渇水状態が進み、この水位の低い状態が続けば湖魚の生育状況にも影響が出てくることは必然であり、県レベルでの対策が考え始められています。
 このような琵琶湖の環境の変化は私ども漁業者にとっても大きな懸念材料となってきています。環境の変化が穏やかだった頃は長年培ってきた経験値で漁を営み生計を立ててきましたが、このところの年毎に変わる環境に自分たちが合わせていくのは追いつかず、漁師の高齢化により対応しきれないのが現状です。このまま漁ができない状態が続けば漁業で生計を立てていくことは難しく、生計が立てれなければ後継者につなげていくことも難しくなります。将来的には琵琶湖の漁業の存続にも大きく影響してくることとなるのではないでしょうか。
 これから迎える冬は“暖冬傾向”だそうですが、これまでの「季節のずれ」が年に一度、冬に起こるとされている『琵琶湖の深呼吸“琵琶湖の全層循環”』にも影響があるのでは…と懸念しております。そうならぬよう、この「季節のずれ」が少しずつでも修正され、いつもの冬が到来するよう願うばかりです。

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 ぜひ、こちらもご覧下さいませ。
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 今年の沖島の紅葉 色づき遅く・・・

 今年の沖島の紅葉は、この夏から続く異常気象の影響か、例年より時期がずれ、漁港の桜並木などの桜の木は色づく前に多くの葉が落ちてしまったような感じでしたが、沖島神社の紅葉や山間などは11月中旬頃から色づき始めました。昨年は10月下旬頃から始まり11月初旬には多くの木々が色づいていたので、今年は昨年に比べ2週間近く遅かったのではないでしょうか。
 例年、沖島の紅葉は、沖島漁港の桜並木、島の西側の「桜のトンネル」から色づき始め、島内や山間の広葉樹へと紅葉していきます。その色づき方は気温だけではなく琵琶湖の水温の変化にも左右されるため、毎年その年ごとに少しずつ違う紅葉風景を楽しませてくれます。
 今年は11月に入っても気温が夏日に近い日があったため、「今年は紅葉するのだろうか…?」という声が聞かれるような状況でしたが、11月も中旬近くになると急激に気温の低い日があるようになり、ようやく紅葉らしくなってきたように思います。漁港の桜並木や島の西側の「桜のトンネル」は紅葉する前にほとんど葉が落ちてしまったり、例年、色づきが早い木がなかなか色づかなかったり・・・と異変は感じますが、沖島神社の紅葉などはあざやかに色づき、山間も赤や黄色に色づき今年も束の間の秋を感じさせてくれました。
(写真撮影日 2023/11/21 晴天)


★ 今年の紅葉写真は、こちらからもご覧いただけます。・・・◆沖島 紅葉アルバム

11月29・30日に“樽だし”しました♪
 〜ふなずし手作り講習会〜


“沖島の鮒ずし”
 お待たせ致しました。今年もこの夏「ふなずし手作り講習会」で漬け込んだ“鮒ずし”が樽だしの時期を迎えました。 今年の講習会は4年ぶりに何も制限のない中で開催され、和気あいあいとした笑顔がみえる講習会となりました。また、今年はニゴロブナ漁が豊漁だったことから、サイズや状態も良好で、大きさの揃った卵をたっぷりはらんでいるものを材料として用意させていただくことができたことから、鮒ずしの出来栄えも上々では…と期待をもって“樽だし”の日を迎えました。

“ニゴロブナ”
今年は最高のものが揃いました
今年の夏は早くから高温になる日が続き、「異常気象」と言われてきましたが、“鮒ずしの漬込み”にとってはとても良い条件となりました。鮒ずしは発酵食品であり、発酵がゆっくり順調に進むことで芳醇な味わいをもたらします。そのようなことから、気温が30℃以上になる日が続くようになる7月は漬込み始めるのに最適な時期であり講習会も毎年7月を待って開催しております。一説には「温室で漬込めば同じなのでは・・・」という説もあるようですが、出来栄えは満足のいくものではなかったようで、やはり人工的ではなく昔から伝わる自然の力を利用したものには、かなわないのではないでしょうか。そして、最高の材料と条件が揃った今年の鮒ずしは出来栄えも上々のようです♪

 樽だしをした鮒ずしは、一尾ずつ丁寧に漬込んだご飯と一緒に真空パックにし、ダンボールに詰めて、ご自宅へお送り致しております。鮒ずしは発酵食品なので少しずつ発酵が進みますが、真空パックのまま冷凍保存していただければ、食べ頃の状態のまま長期保存していただけます。
 “鮒ずし”は、滋賀県を代表する名産品で滋賀県の無形民族文化財にも指定されています。昔は各家庭で保存食として漬込まれ、お祝い事などの料理の一品として、時には風邪や下痢などの薬として頂く日常的なものでしたが、今では家庭で鮒ずしを漬けることも少なくなってきています。

“鮒ずし手作り講習会”の様子
 「ふなずし手作り講習会」も今年で15年目を迎えました。私どもの講習会では“現代のライフスタイルや住環境に考慮した漬け込み方”をご紹介し、「ふなずし手作り講習会の鮒ずしは食べやすい♪」と大変ご好評をいただいており、将来につながる励みとなっています。この漬け込み方を多くの方に知っていただき、将来的には、“鮒ずし”が昔のように各家庭で漬け込まれる身近な食品となれば、嬉しい限りです。毎年、同じ漬込み方で漬け込んでも、その年の天候、漬込み手の違いなどにより仕上がりは異なりますが、これこそが自然の恩恵を実感し、手作りの良さ・楽しみではないでしょうか。そんなことも感じていただけたら幸いです♪
★「鮒ずし手作り講習会」の漬込み方をご紹介しています⇒“おいしい鮒ずし”漬けてみませんか♪


 “後継者育成事業”・・・新研修生♪

 今年の春、沖島漁協の“後継者育成事業”の一環として、国が行う3年間の研修制度に参加し卒業された青年が沖島で“スジエビ漁の漁師”としてひとり立ちされ、頑張っておられます。
 そして新たにこの秋、「沖島で刺し網漁を学びたい」という25才の青年が県が行う半年間の研修制度に参加を希望され、現在調整中です。制度への参加が正式に決まれば、沖島漁協は「指導者」として携わらせていただくこととなります。
 「漁業」という仕事は、自然の営みの影響を大きく受け、人間にはコントロールしきれない厳しいものでもあります。現に今年は「異常気象」という自然の営みに翻弄されています。しかしながら、だからこそ実感する喜びや手応え、そして自然の恵みの尊さなどを技術とともに学んでいただけたら・・・と思います。今回は半年間という短い期間ではありますが、その研修により今以上に「漁業」に興味を持っていただき、次のステップへ進んでいただけるよう、私どもも出来る限りの支援をさせていただきたいと思います。

 11月18・19日開催の“アイランダー2023”に参加♪

 11月18・19日に東京池袋サンシャインシティで開催されました『全国の島々が集まる祭典“アイランダー2023”』に沖島も参加いたしました。
 この“アイランダー”とは国土交通省、公益財団法人日本離島センターが主催し、今年で31回目を迎えています。沖島は2013年から参加し今年で11年目となります。イベントでは島の伝統芸能や特産品、島のグルメを通して島の魅力を発信し、知っていただくことを目的としています。また、島への移住相談や観光相談なども行っています。
 沖島も「沖島町離島振興推進協議会」が中心となり、沖島の郷土料理である“えび豆”や“湖魚の若煮”などを出品し沖島の魅力発信に努めてきました。今年は出品した“えび豆”や“わかさぎ若煮”は完売しご好評をいただきました。また、島の移住相談にも数名の方が相談にみえました。
 このところ、SNSなどの発達により情報発信の仕方も多種多様になってきておりますが、このようなイベントで直接、島の魅力に触れていただき、コミニュケーションがとれるということも大切なことだと感じております。このようなイベントに積極的に参加していくことはもちろんのこと、沖島でも『おきしまるしぇ
(10/29開催)』などのイベントを開催したり、東京日本橋「ここ滋賀」での“沖島の味”の常設販売や実演販売なども行っております。これからも多種多様な島の魅力発信に努め、多くの皆様に知っていただくことが、“母なる琵琶湖”を守っていくことにつながると信じ励んで参りたいと思います。
★『全国の島々が集まる祭典“アイランダー2023”』の詳細は「アイランダー」で検索してみてください♪


 ここからは、例年の“秋の沖島”の様子をご紹介しております 
 

◆ 紅

  10月後半から11月中旬にかけて、沖島の山々も色彩豊かに彩られます。その中から絶景ポイントをご紹介いたします。
 ※ 写真はH21年11月中旬に撮影したものです。
◇ 瀛津島神社(おきつしまじんじゃ)


 紅葉に彩られた“瀛津島神社(おきつしまじんじゃ)”は、厳かな中にも温かみがあり、趣き深いものがあります。


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                     風景写真  
◇ ケンケン山(見景山)


 ケンケン山に登っていく途中の紅葉も美しく、また、「お花見広場」からは、比良山系・比叡山が望めます。


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                    風景写真
◇ ホオジロ広場


 ケンケン山「お花見広場」から山道を暫く歩くと“ホオジロ広場”に到着します。
 ホオジロ広場からは、沖島の西側を展望することができます。

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◇ 蓬莱山の頂上


 沖島で一番標高の高い蓬莱山の頂上からは、琵琶湖を見下ろすことができ、また湖東の景色を一望することができます。 ここから見る対岸の風景は評判です。



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                    風景写真
◆ 秋の行事  
◇ 秋祭り

 毎年9月下旬から10月初旬頃に、さまざまな収穫に感謝をし“瀛津島神社”、“弁財天(厳島神社)”で行われます。
 昔から、秋の収穫期にあたる頃に行われるため、春より簡素な形で行われてきました。現在では、「子供みこし」も催されるなど、内容は昔と様変わりしたところもありますが、感謝する気持ちは受け継がれています。
 また、“弁財天”では、お祭りの前日、夕方頃から船で、神主さんとともに氏子、その子供達がお供えにお赤飯を持って参拝する風習があります。参拝後、お供えしたお赤飯で“おにぎり”を作ってもらって頂きます。島の子供達の秋祭りの楽しみのひとつです。この風習は今でも大切に受け継がれています。
                 
◇ 先覚者の法要
 
 昭和27年(1952)、沖島漁協に功績のあった方々を称え、“沖島先覚者碑”が建立されました。毎年、秋祭りの初日に先覚者の方々に感謝をし、ここで法要が営まれます。

◇ 島の運動会

 毎年、沖島小学校と合同で行います。世代を超えて楽しめるイベントです。
◇ 魚貝類の虫供養

 毎年、“先覚者の法要”と同日に漁に感謝をし、獲った魚貝類を供養するために行われます。
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