“秋”の沖島      R6年版


 “地蔵盆”が過ぎ、わかさぎ漁が始まると、
そろそろ秋の気配を感じ始めます。
 沖島の秋は湖の恵み・山の恵みと、まさに
“実りの秋”です。また秋祭り等の行事が行われ、様々な恵みに感謝をする季節でもあります。
 そんな“秋の沖島” に足を運んでみませんか・・・♪



  令和6年・秋の話題

 今年も昨年同様、全国的に10月に入っても夏日になるなど気温の高い日が続きましたが、沖島でも同様に秋の気配を感じることなく11月を迎えました。それまで紅葉する様子が全く無かった木々も立冬を迎える頃ようやく紅葉が進み始めたように思います。しかしながら、総じて平均気温は高いように感じており、11月も下旬に入る頃には西よりの風が吹くようになるなど気象的には寒くなる兆しがありましたが、体感的には寒さを感じるほどではありませんでした。このところの異常気象などのせいで季節を感じる感覚が麻痺しているのか…実際には秋が訪れているのかもしれませんがピンと来ない感じでした。
 今年の沖島の紅葉についても、昨年から続く異常気象の影響か例年より大幅に時期がずれ、「今年は紅葉を見ることなく冬が来てしまうのでは・・・」との懸念も感じておりましたが、今年も遅いながらも紅葉し、束の間の秋を感じることができました。
 そんななか、今年も秋恒例の行事である「秋祭り」や「沖島学区運動会」、イベント『おきしまるしぇ』も滞りなく開催することができました。「秋祭り」には島民よりも島外からお越しになる方が多くなり、『おきしまるしぇ』においても天候のせいか昨年よりは少なかったものの島外から多くの方にお越しいただきました。また、「沖島学区運動会」では晴天に恵まれ、お手伝いして下さる学生の方々が色々な面で関わって下さり、盛り上がりを感じさせる運動会となりました。これも年々関わって下さる方々が沖島独自の運動会に対する考え方・見方などを理解し、お力添え下さっている賜物であると感謝しております。若い方が加わった「リレー」などからは、その走りっぷりに元気を頂きました。
 このような秋を迎えた沖島ですが、漁業においては「前途多難」と言わざるを得ない状況となっています。これから迎える冬が何事にも翻弄されることなく過ごせることを願いつつ、冬の足音も聞こえ始めた沖島から、いくつかの話題をお届け致します♪

  今年の沖島の紅葉 色づき遅く・・・

 今年の沖島の紅葉は、昨年から続く異常気象の影響か例年より大幅に時期がずれ、昨年も異常気象の影響か、紅葉時期が11月中旬頃と例年に比べ遅かったのですが、今年は更に遅い紅葉となりました。
 例年、沖島の紅葉は、沖島漁港の桜並木、島の西側の「桜のトンネル」から色づき始め、島内や山間の広葉樹へと紅葉していきます。その色づき方は気温だけではなく琵琶湖の水温の変化にも左右されるため、毎年その年ごとに少しずつ違う紅葉風景を楽しませてくれます。
 今年も昨年のように暦の上では秋と言えども気温が高めで、「今年は紅葉を見ることなく冬が来てしまうのでは…」という声が聞かれるような状況でしたが、立冬を過ぎる頃からようやく桜の木が少しずつ色づき始め、本格的に色づいたのは11月の第3週目頃で色づくとともに葉も落ち始め、少し寂しい紅葉風景となりました。沖島神社の紅葉(もみじ)や山あいなどにおいては、11月の第4週目頃からようやく色鮮やかな紅葉風景となりました。今年は桜の木が紅葉し落葉後、沖島神社などの島内のもみじが紅葉するというように段階的な紅葉となりましたが、今年もこの紅葉風景に束の間の秋を感じることができました。

(写真撮影日 2024/11/26 曇天)


★ 沖島の紅葉写真は、こちらからもご覧いただけます。・・・◆沖島 紅葉アルバム

 今年の秋の漁・・・前途多難と言わざるを得ません 

 今年もビワマス漁や小アユ漁が例年通り禁漁期間に入るなど漁も夏から秋の漁へと移り変わってきましたが、全般的に“獲れない”と言わざるを得ず、今年も昨年から続く異常気象の影響を受けていることは否めない状況となっています。
 秋になっても夏の猛暑による気温の上昇に伴い、水温も2〜3℃高い状態で推移しています。このことは湖魚の行動に影響を与え、資源(湖魚)が暑さにより減ってしまっているのではなく湖魚が行動パターンを変えてしまっているから“獲れない”状況となっているのだと思われます。

“わかさぎ若煮”
 その中でも、辛うじて獲れる“ワカサギ漁”は夏の終わり頃から獲れはじめ、10月は豊漁といってもよい状況でしたが、現在(11月下旬)は秋から冬にかけての移動時期であり場所を変えているため、漁がしづらくなっており、水揚げもそれほど多くはありません。また近年、ワカサギが子持ちになるのが早くなったと言われていますが、大きいもの、小さいものと大きさのバラつきはあるものの、子持ちにはなっていないようです。この大きさのバラつきからも資源的にはかなり多いと思われ、これから獲れるようになると思われます。
 他の湖魚においても、今(
11月下旬)は秋から冬にかけての移動時期ではあるのですが、ワカサギはまだ獲れるものの、他の湖魚においてはさっぱり獲れないのが現状です。

“スジエビ”
 不漁が続いている“スジエビ漁”は全く獲れず、とても厳しい状況が続いています。少し獲れた時期もありましたが束の間でこの夏以降も悲惨な状態となっています。資源的にはある程度いるとは思われますが、数年前に比べると疑問が残ります。というのも、何十年も前から、6〜7月の「えり漁」に入る、ある程度成長したスジエビを「活き」の状態で釣りエサとして流通させるということを行っていたのですが、昨年ぐらいから、この「えり漁」にもさっぱり入って来なくなったからです。このことはスジエビ漁をする漁師にとって獲れない上に更に大きな痛手となっています。
 “ホンモロコ漁”においても天候状態にもよりますが、水揚げは多くない状況です。先日、冬の到来を告げる比良山の冠雪がありましたが、かつてなら冬に向っていくこの時期から水揚げが日増しに増えていくのですが、暖冬傾向により平均気温が高いためかそのような状況は見られません。また、かつてのよく獲れていた頃のホンモロコは成長過程において揃って成長していましたが、現在は不揃いな成長の仕方をしています。このことは、「資源は回復してきている」と言われていますが、私どもの経験値からは資源の乏しさを感じてしまいます。

 このような漁の様子から見ても、“季節による魚が獲れない”という今まで経験したことのないような傾向が顕著になってきているように思います。気圧配置などから季節が冬に進んだようになっても、実際には冬にとる行動とは違う行動を魚はしています。このことは猛暑、暖冬、異常気象の影響だと感じざるを得ず、行動の仕方の根底になっているのではないでしょうか。また、このような状況は私ども漁師が長年積み重ねてきた経験値が全く役に立たない状況でもあります。


“ヒウオ(アユの稚魚)”
 現在、漁は行われてませんが今年不漁だった“小アユ”は、水産試験場によると今年は昨年の倍くらいの産卵があったとされています。11月の初旬頃まで行っていたウロリ漁の網には、たくさんの小アユの稚魚が入って来ていましたが、果たして産卵は順調と言えるのでしょうか。毎年行われている人工河川への親アユの放流ですが、昨年は例年の2割しかふ化しなかったことを踏まえ今年は20t放流されましたが、その割りには獲れが悪い(稚魚が少ない)ように感じています。今年、昨年の倍あったとしても例年の2割の倍、つまり例年の4割しかしていないことになり安心できる状況とは言えません。これも推測するに水温が関係しているのではないかと思います。大きさ的に比較にはなりませんが…海でも海水温の上昇などから今までその海域では獲れなかった魚が獲れたりするなど、海でも今までなかったようなことが起きていることを思うと、縮小して考えれば琵琶湖でも同じようなことが起きているのではないかと心配せざるを得ません。“小アユ漁”は漁協にとって大きな収入源となるため期待を持ちたいのですが、12月から行われる“ヒウオ(小アユの稚魚)漁”、そしてこの先の“小アユ漁”も先行きが不安な状況です。

 このように漁の様子を紹介して参りましたが、今の琵琶湖の漁業は、私ども漁師が今まで経験したことのない状況に陥っており、資源(湖魚)はあると思われるのに積み重ねてきた経験値が全く役に立たず、漁獲できないという状況となっています。そのため実際に漁に出ても一抹の寂しさを感じてしまい、気力さえ削がれてしまいます。昔から経験してきたことに少しでも状況が戻り経験値が生かされるなど、何かしら手応えがあれば気力も湧き、今後への期待感ももてるのでしょうが今の状況では期待感は全く持てません。「漁」、「漁協の運営」、「沖島の状況」全てのことにおいて“前途多難”と言わざるを得ない状況です。しかしながら、このような状況に気持ちを切り替え、自分たちが合わせていくには漁師の高齢化などにより対応しきれないのも現状です。このまま漁ができない状態が続けば漁業で生計を立てていくことは難しく、生計が立てれなければ後継者につなげていくことも難しく、後継してもらうとしても心苦しいばかりです。
 これから迎える冬は、このところの異常気象によってどんな冬になるのか、それによって漁がどんな影響を受けるのか・・・懸念ばかりが残りますが、これから迎える冬が少しでも明るい兆しが見え、“前途洋々”となることを願い、模索していきたいと思います。

“こあゆ山椒入り若煮”

“わかさぎ若煮” 

“うろり若煮”

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 ぜひ、ご賞味くださいませ。
  
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“琵琶湖のさかな”食べてみませんか♪



11月26・27・28日に“樽だし”しました♪
 〜ふなずし手作り講習会〜


“樽だしの様子”
 お待たせ致しました。今年もこの夏「ふなずし手作り講習会」で漬け込んだ“鮒ずし”が樽だしの時期を迎えました。今年で講習会も16年目となり、今年も大変多くの方にお越し頂き、和気あいあいとした笑顔がみえる講習会となり、今年は127樽大切に保管させていただきました。
 今年はニゴロブナ漁が豊漁とは言えず、全体としては平年並みの目標量を確保できましたが、前半の沖びき漁で獲れた魚は質としては少し落ちるものの、目標量確保のためには含まざるを得ませんでした。そのため、全体的な材料の質としては“良い”とは言えませんでしたが、今年も大きさにばらつきはあるものの、漬かり具合は良好のようです。
 樽だしをした鮒ずしは、一尾ずつ丁寧に漬込んだご飯と一緒に真空パックにし、ダンボールに詰めて、ご自宅へお送り致しております。鮒ずしは発酵食品なので少しずつ発酵が進みますが、真空パックのまま冷凍保存していただければ、食べ頃の状態のまま長期保存していただけます。

@漬かり具合を見ながら一尾ずつ取り出します
 Aご飯を程よく残して取り出した鮒ずし
Bご飯と一緒に一尾ずつラップで包みます

Cラップで包んだ鮒ずしを一尾ずつ袋に入れます

D一尾ずつ真空パックにします

 “鮒ずし”は、滋賀県を代表する名産品で滋賀県の無形民族文化財にも指定されています。昔は各家庭で保存食として漬込まれ、お祝い事などの料理の一品として、時には風邪や下痢などの薬として頂く日常的なものでしたが、今では家庭で鮒ずしを漬けることも少なくなってきています。

“沖島の鮒ずし”
 「ふなずし手作り講習会」も今年で16年目を迎えました。私どもの講習会では“現代のライフスタイルや住環境に考慮した漬け込み方”をご紹介し、「ふなずし手作り講習会の鮒ずしは食べやすい♪」と大変ご好評をいただいており、毎年、将来につながる励みとなっています。この漬け込み方を多くの方に知っていただき、将来的には、“鮒ずし”が昔のように各家庭で漬け込まれる身近な食品となれば、嬉しい限りです。
毎年、同じ漬込み方で漬け込んでも、その年の天候、漬込み手の違いなどにより仕上がりは異なります。まさに「鮒ずし作り」は自然と人間の共同作業だと思います。自然の恩恵を実感し、手作りの良さ・楽しさも感じていただけたら幸いです♪
 また、私ども漁協にとっても「ふなずし手作り講習会」は毎年の明るい話題であり、運営面からも大きな財源となっています。しかしながら、場所や日程、体力的にも制限があることから拡大することは難しいのが現状です。回数が増えれば材料の確保も増えるなど、色々なことが今の状況より大きく変わってくることになります。継続していくにはそれなりの質を保っていく必要があり、現時点でも継続が大変な状況にあることなどからも、拡大ではなく継続することに力を注ぎたいと思っております。“とりあえず20周年”を目指し、この私どもの誇れるイベント「ふなずし手作り講習会」を大事にしていきたいと思っております。
★「鮒ずし手作り講習会」の漬込み方をご紹介しています⇒“おいしい鮒ずし”漬けてみませんか♪


“琵琶湖”の状況は今・・・

 現在の琵琶湖の状況は渇水状態ではあるものの、昨年に比べれば渇水状況は改善されています。昨年は−78cmまで水位が下がったことがありましたが、現在(11月下旬)は−45cmとなっています。しかしながら今年の琵琶湖周辺は雨が少ない状態が続いており、台風は来たものの琵琶湖に影響を与えるほどではありませんでした。そのため、今の琵琶湖の現状は不安材料ばかりです。
 琵琶湖を「大きな器」として捉えると、この雨量が少ないということは新しい水が注ぎ込まれないため浄化できず、水が汚れてしまうことになります。汚れた水ではプランクトンも発生しづらく湖魚にとってはエサ不足の状態となってしまいます。このことを示すかのように最近の琵琶湖は水の透明度が増してきているように思います。これはプランクトンなどが少ないため水が澄んでいるのだと思われます。「水清ければ魚住まず」という言葉がありますが、親潮や黒潮などの海流の影響を受けにくく毎日水が入れ替わることのない瀬戸内海でも同じような状況がみられるようです。既に瀬戸内海では「明石鯛」や「明石蛸」は確実に減ってきており“豊かな海”ではなくなってきてるそうです。海と湖という違いはありますが、毎日のように水が入れ替わることのない琵琶湖も同じような傾向にあるのではないかと懸念しております。このような状況下、瀬戸内海では法律改正をし「水質のバランス」を図る取組みが始められています。琵琶湖でも何らかの対策をしていかなければならないのかもしれません。
 このような状況からも「降雨量」は自然環境にとって大きな影響力を持っていると思います。琵琶湖などのように毎日水が入れ替わることのないところでは、雨が多い状態は自然環境を緩やかにし環境の安定化につながると思います。学術的にも琵琶湖の水位が−30cm以下になると湖魚にも何らかの影響が出てくると言われており、私ども漁師にとって、琵琶湖の渇水状態が続いていることは不安材料となっています。また、琵琶湖にとっても環境の安定化にはつながりません。仮に水位が+30cmくらいになったとしたら、琵琶湖の環境としては良いと思いますが、琵琶湖の水位は琵琶湖の治水事業によりコントロールされているため、まず「+」の水位になることはありません。また、湖底の状態も今年は台風などの影響も受けなかったことから変わらない状態が続いています。
 このようなことから琵琶湖の環境を考える上で人間に出来ることは殆どないのではないでしょうか。「自然は自然にしか守られない」ということを実感してしまいます。そういった観点から私達人間は今の環境を守り、壊さない努力をすることが大切なのではないでしょうか。琵琶湖に暮らすものとして、これからも琵琶湖を注意深く見守っていきたいと思います。



 ここからは、例年の“秋の沖島”の様子をご紹介しております 
 

◆ 紅

  10月後半から11月中旬にかけて、沖島の山々も色彩豊かに彩られます。その中から絶景ポイントをご紹介いたします。
 ※ 写真はH21年11月中旬に撮影したものです。
◇ 瀛津島神社(おきつしまじんじゃ)


 紅葉に彩られた“瀛津島神社(おきつしまじんじゃ)”は、厳かな中にも温かみがあり、趣き深いものがあります。


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                     風景写真  
◇ ケンケン山(見景山)


 ケンケン山に登っていく途中の紅葉も美しく、また、「お花見広場」からは、比良山系・比叡山が望めます。


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◇ ホオジロ広場


 ケンケン山「お花見広場」から山道を暫く歩くと“ホオジロ広場”に到着します。
 ホオジロ広場からは、沖島の西側を展望することができます。

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◇ 蓬莱山の頂上


 沖島で一番標高の高い蓬莱山の頂上からは、琵琶湖を見下ろすことができ、また湖東の景色を一望することができます。 ここから見る対岸の風景は評判です。



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                    風景写真
◆ 秋の行事  
◇ 秋祭り

 毎年9月下旬から10月初旬頃に、さまざまな収穫に感謝をし“瀛津島神社”、“弁財天(厳島神社)”で行われます。
 昔から、秋の収穫期にあたる頃に行われるため、春より簡素な形で行われてきました。現在では、「子供みこし」も催されるなど、内容は昔と様変わりしたところもありますが、感謝する気持ちは受け継がれています。
 また、“弁財天”では、お祭りの前日、夕方頃から船で、神主さんとともに氏子、その子供達がお供えにお赤飯を持って参拝する風習があります。参拝後、お供えしたお赤飯で“おにぎり”を作ってもらって頂きます。島の子供達の秋祭りの楽しみのひとつです。この風習は今でも大切に受け継がれています。
                 
◇ 先覚者の法要
 
 昭和27年(1952)、沖島漁協に功績のあった方々を称え、“沖島先覚者碑”が建立されました。毎年、秋祭りの初日に先覚者の方々に感謝をし、ここで法要が営まれます。

◇ 島の運動会

 毎年、沖島小学校と合同で行います。世代を超えて楽しめるイベントです。
◇ 魚貝類の虫供養

 毎年、“先覚者の法要”と同日に漁に感謝をし、獲った魚貝類を供養するために行われます。
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