“冬”の沖島 

 2025年・冬
 沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。
 
厳しい季節のなかで、島民は左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。 
 


令和7年・冬の沖島から・・・

 今年の冬も昨年に続き全国的に“暖冬傾向”と言われるなか、沖島でも昨年12月末に来た寒波で数センチの積雪があったなど昨年よりは寒く感じるものの、2月までは全般的にそれほど厳しさを感じることはありませんでしたが、今年は風の強い日が多いため、波が高く晴れていても漁に出られない日が例年より多いように感じています。また、2月に入ってやって来た“数年に一度”と言われた寒波、その後に再び到来した寒波では積雪となりました。この冬は雨が少なく琵琶湖の水位も−40cm前後の渇水状態が続いていますが、これらの寒波による積雪で水位が少しでも回復することを期待するところです。
 そのような冬を迎えたなか、今年も一年で最初の年中行事である「左義長」が滞りなく行われ、この一年の無病息災、五穀豊穣、大漁など祈願させていただくことができました。沖島の冬は一年を通じて一番静かな時期ではありますが、天候の影響や漁協婦人部“湖島婦貴の会”の本格始動前
(2月5日現在)ということもあり、観光客の方も少なめではありますが、SNSなどの情報により“沖島の味”を求めて渡って来られる方や「左義長」の見物など冬の沖島を楽しんでいただいてる方々をお見受けすると、より一層、島の活性化に取り組む励みをいただきます。そんな冬の沖島より、この冬の話題をいくつかお届け致します。

 この冬の漁・・・琵琶湖の環境を心配せざるを得ません

 一年を通して冬は、天候により漁に出られない日が多くなったり、湖魚の習性によって漁がしづらくなるなど、一年の中で最も水揚量が少なくなる時期ではありますが、今年は風の強い日が多く波が高くなるため例年よりも漁に出られる日が少なくなっており、水揚げ的にも例年より悪い状況と言えます。また、今年は現時点
(2月5日)で、まだ“琵琶湖の深呼吸”と言われる「全層循環」が起きていないため、水の状態が安定していない状況であり、このことは漁のしづらさに繋がっています。それにも増して、この冬の漁を通して最も懸念するのは琵琶湖の環境を心配せざるを得ない事象がおきていることです。
 その一つとして挙げられるのは、この冬の“ホンモロコの大きさ”です。水揚げ的には獲れるところでは獲れているのですが、顕著な傾向として“サイズが小さすぎる”ということです。例年ではこの時期のホンモロコは7〜8cmくらいまで成長しているのですが、水揚げされるているものは4〜5cmくらいしかなく、明らかな成長の遅れを示しています。この成長の遅れは「エサが足りていないからではないか?」という推測につながります。このところホンモロコは資源的な回復が見られ個体数が多くなってきており、そのことからエサの取り合いが起き、成長が遅れているのではないかという推測です。しかしながら、以前、今の20倍近く獲れていたときでも、このようなことは起きておらず、現在はその20分の1の個体数にも関わらずエサが足りないという状況は琵琶湖の環境を心配せざるを得ない状況なのではないでしょうか。また、もう一つ推測されるのは産卵場所の変化・拡大です。これまで産卵場所として好んでいたのは“柳の根っこ”などが多かったのですが、最近は“石ころだらけの湖岸”でも産卵が確認されています。このことは“柳の根っこ”など好んで産卵していた場所が琵琶湖の環境が変わってきたことにより少なくなり、他の産卵場所を求めてホンモロコが適応してきているからです。この“石ころだらけの湖岸”は柳の根っこなどに比べ、エサとなりそうなものは乏しいと思われ、生まれた時からエサの少ない環境での成長を余儀なくされてています。そして、ホンモロコはある程度の大きさにならないと卵を抱えないため、産卵時期の遅れにも繋がり悪い方向への連鎖となっていきます。このような連鎖は、ますます琵琶湖の環境が心配と言わざるを得ない状況を生むことになるのではないでしょうか。
 また、この小さすぎるホンモロコは商品価値としても落ちてしまいます。ここのところ資源的にも回復し良い方向に来ていると思われていた状況に水を差すこととなっています。


“ヒウオ(アユの稚魚)” 
 続いて挙げられる事象は、この冬の“ヒウオ漁”です。この漁は養殖用、放流用の種苗としてアユの稚魚を獲るのが目的であり、養殖業者からの注文など今年の需要に合わせて漁獲量が計画されます。アユの稚魚は体が透きとおって見えることから“ヒウオ(氷魚)”と呼ばれています。今期の“ヒウオ漁”は過去に例がないほどの不漁でした。今までの沖島のヒウオ漁は12月に入ると「えり漁」と言う漁法で獲りはじめ、注文量に達したらそれ以降の漁は行わず、えりの網も撤去してしまいますが、今期はなかな注文量を達成できなかったため、1月いっぱいまで漁を行いましたが達成できる見込みがないということで最終的には注文量を達成しないまま漁を終えました。このようなことは過去に例がないことで驚きとともに大きな不安を抱える結果となりました。この不漁の原因としては、推測される事が三点ほど挙げられます。
 一つ目は「人工河川で産卵したものがふ化したものの育たなかったのではないか」ということです。毎年、琵琶湖では“小アユ漁”の安定化のために県や県漁連が主導し人工河川に親アユの放流を行っています。これは琵琶湖の深層部のある程度水温が下がった湖水を汲み上げ人工的に河川を作り産卵環境を整え、親アユを放流します。人工河川は昨年9月から稼動させ、今期は4割ほどの産卵があったと予測されており、12月の“ヒウオ漁”の頃には9月にふ化したものが稚魚としてある程度の大きさまで成長していることや前期は2割ほどだった産卵も今期はその倍の4割あったと予測されていたこともあり、期待をしていたのですが全く違う結果となりました。この結果から、ふ化したものが育たなかったのではないかと推測でき、現にふ化した稚魚の死骸をみたという報告もあります。
 2つ目は「天然のアユの産卵が例年より遅かったため成育に影響が出ているのではないか」ということです。天然のアユは例年9月頃に産卵を始めますが、今年の産卵は10月初旬頃でした。このことは例年より15〜20日ほど遅れており、この遅れがアユの成育にどんな影響があったのかはわかりませんが、何らかの影響があったものと推測されます。
 3つ目は「アユの稚魚のサイズが小さすぎて、資源的にはいるもののえり漁の網からすり抜けてしまい不漁だったのではないか」ということです。
 これら3つの推測からみても、結局は琵琶湖という自然界で起こっていることであり、人間の「予測」や「力」で何とかしようとするのは難しいことだと実感しております。また、1つ目、2つ目の推測のように稚魚が成長できなかったため…ということなれば、ホンモロコのサイズ縮小と同様に、ますます琵琶湖の環境を心配せざるを得ません。春に本格化する“小アユ漁”が今から懸念されますが、水産試験場の予想では3つ目の推測のように“ヒウオ漁”ではサイズが小さすぎて獲れなかっただけで春の刺し網漁では獲れるようになるとされています。現時点では、この予想が当たることを願うばかりです。


冬のならではの“わかさぎ一夜干し”
 また、冬に旬を迎えていた“ワカサギ漁”ですが、12月頃までは採算ベースに見合うぐらいの水揚げがありましたが、1月には獲れなくなり採算ベースにものらない状況となっています。また、年々産卵時期が早くなり今年は既に産卵を終えてしまっており、子持ちではないワカサギばかりで、早い時期にはサイズの大きいものも見かけましたが、今は小さいものが多いようです。資源(湖魚)的にはいると思われますが、今年は2月上旬時点では「全層循環」が起きていなかったこともあり、湖水の状態が安定していないため漁がしづらい状況でした。ワカサギは、以前は琵琶湖の冬を代表する味覚でしたが、原因は不明ですが産卵時期が3月頃から12月後半まで遡って早くなってしまったことで真冬に獲れるものは子持ちではなくなってることや、水揚げ量的にも真冬は少なくなっていることから“旬”と言える時期も早くなってしまうのかもしれません。

 昨年の11〜12月にかけて危機的な状況だった“スジエビ漁”は1月後半頃から少しずつスジエビの姿を見るようになり危機的な状況は脱したのではないかと思われます。一時期は琵琶湖からスジエビが消えたのではないかと思われる思うほどの不漁でしたが、これから水揚げが徐々に増えたとしても全体を通してみれば、あまり良くはないのかもしれませんが、昨年の冬、スジエビ漁を生業とする漁師にとって死活問題になりかねない状況からは脱したと思われ、少し安堵しております。

 2月20日頃から水揚げが始まる“ニゴロブナ漁”は、今のところ見通しとしては安定して獲れるのでは・・・と推測しています。というのも、他の漁で「ニゴロブナ」の稚魚を多く見かけるからです。小さいものがいるということは大きいものもいるということに繋がるため期待してもいいのでは・・・と思います。今年も例年同様に“塩切り鮒の予約販売”や“ふなずし手作り講習会”を開催する予定です。これらの主役となる「ニゴロブナ」の確保は最も重要なことなのですが、何よりも漁は自然相手のため天候に左右されやすく予測がつかないものです。そのことからも少しずつ作業を前倒しして進め、「ニゴロブナ」の確保を進めていきたいと思います。

 ここまで、秋から冬の漁に移り変わって2月前半までの漁の様子を紹介してまいりましたが、“スジエビ漁”や“ニゴロブナ漁”など、これからの水揚げが期待できるものもある一方、“ホンモロコの大きさが小さすぎる”、“ヒウオ漁が過去にない不漁”、“ワカサギの産卵時期が年々早くなる”などの事象は現在の琵琶湖の環境を心配せざるを得ない不安材料となっています。そして、私ども漁業者にとって過去に経験したことのない、説明がつかないような現象は経験値生かすこともできず、強いジレンマも感じています。また、このような状況は漁業者を育てていくにはあまりにも難しく、琵琶湖漁業の存続にも不安を感じざるを得ません。
 このような状況下、滋賀県や報道によると今年も“琵琶湖の深呼吸”と言われる「琵琶湖の全層循環」が5年連続で確認されたとの発表がありました。この「全層循環」は琵琶湖に活気をもたらし、湖水も安定することから、漁がしやすくなり水揚げ増加にも繋がっていきます。この発表は漁業者にとって待ちに待った発表であり、これまでの不安材料を軽くし安堵するとともに期待へと繋げてくれます。そして、その期待通り、今の状況が春に向けて少しずつでも好転してくれたら・・・と願うばかりです。
 かつての琵琶湖に頼ってきた者にとっては、かつての琵琶湖と比較してしまい、今の琵琶湖の状況に対して不安を拭い去ることはできません。今の琵琶湖の状況は過去の経験値を生かすことができないことにジレンマを感じ、その状況を受け入れるゆとりもないのが現実です。しかしながら、ここ最近の目まぐるしく変化する琵琶湖の異変をいち早く感じ取ることができるのは、かつての琵琶湖を知る私ども漁師だとも思います。そして受け入れ難い状況に目を背けることなく、向き合っていくことが母なる琵琶湖を守っていくことに繋がっていくのではないでしょうか・・・そう信じて、これからも注意深く見守って参りたいと思います。

《琵琶湖の恵み》 琵琶湖産の湖魚料理の一例です

“こあゆ山椒入り若煮”

“本もろこ南蛮酢漬け”

“沖島の鮒ずし”

★ 上記の湖魚の若煮など沖島の湖魚料理は、通信販売でもお買い求めいただけます。
 ぜひ、ご賞味くださいませ。

  詳細はこちらから・・・

★“「びわ湖のさかな」をたべてみよう”のページでも琵琶湖の湖魚についてご紹介しております。ぜひ、ご覧下さいませ。詳しくはこちらから・・・“「びわ湖のさかな」をたべてみよう!” 


 琵琶湖は今・・・“全層循環”今年も確認されました

 この冬の琵琶湖の様子は秋から大きな変化はないと思われますが、依然として渇水状態は続いています。この渇水状態は、この冬の漁でご紹介した“ホンモロコが小さすぎる”とか“ヒウオ
(アユの稚魚)漁が過去にない不漁だった”など、今起こっていることに直結しているかどうかもわかりませんが、湖魚の成育環境としては水がたっぷりあったほうが良いのでは・・・と思います。また水温は例年の平均値よりも0.1℃高い程度で懸念されるほどではありません。
 しかしながら、漁業者として、今の琵琶湖の状況に対して思うのは不安を拭い去ることができないということです。かつての琵琶湖に頼ってきたものにとって、今までの経験値を全く生かすことができない琵琶湖は、私どもの知らない「新しい琵琶湖」であり、それを迎え入れるゆとりもありません。また、行政側の調査による予測なども実際とあまりに誤差が大きいことが重なると、ますます不安が大きくなるばかりです。
 このような状況下、滋賀県や報道によると今年も「琵琶湖の全層循環」が5年連続で確認されたとの発表がありました。
 この“全層循環”は“琵琶湖の深呼吸”とも言われ、雪解け水など冷たい水が流れ込むことで湖底まで酸素を含んだ水が沈み込み循環することで成育環境が良くなるとともに、漁業にとっても好転材料をもたらしてくれます。このことにより、過去に経験してきた経験値を生かすことができるような状況になってくれれば期待感につながり、漁獲の増加にも繋がっていくと思います。今は春に向けて「琵琶湖が復活するのでは・・・♪」と思われるような状況に好転していくことを願うばかりです。

 頼もしい限りです♪・・・“漁師見習い募集”

 このたび、沖島漁協の“後継者育成事業”で組合長の下で研修を受け、漁師になった塚本千翔さんが“漁師見習いの募集”を始められました。
 この“漁師見習いの募集”は「伝統的なびわ湖漁業を島で一緒に盛り上げる仲間を作りたい」という思いから始められました。そのためには、県や漁連などの後継者育成事業に頼るだけではなく、自らが指導者となり自分で漁師になりたい人を探し出したいという強い思いを持って始められています。また、指導者という立場で募集をされるのですが、実際には共に勉強していきたいという思いで取り組んでおられます。
 漁協にも熱心に相談に来られ、漁協としてもその熱意と行動力に喜びと頼もしさを感じております。漁協が行っている後継者育成事業で漁師になった方が今度は指導者となり漁師の育成に携わりたいという繋がりが生まれたことは、大きな喜びとともに沖島の漁業に明るい兆しをもたらしてくれました。この志を応援すべく、漁協としても出来る限りの協力をしていきたいと思います。
※ “漁師見習い募集”についての詳細はこちらをご覧下さい・・・塚本千翔/Chisho/Okisima



 1月12日(日) 左義長祭りが行われました


※写真は今年のものではありません。
 今年も1月12日(日)、沖島の“左義長祭り”が行われました。当日は寒気らしきものが来ておりましたが、そこまで冷え込むことなく穏やかな天気のもと滞りなく行われ、この一年の無病息災、五穀豊穣、大漁など祈願させていただくことができました。観光客の方やカメラを構える方などもちらほらお見受けいたしましたが、島民中心のお祭りとなりました。
 今年の“左義長祭り”は、「スムーズによく燃えた」とか「良い形の左義長だった」などの感想が多く聞かれ、総じて「良い左義長祭りだった」と思います。「良い形・・・」というのは今年の左義長は膨らみがあり、ガッシリとした堂々たる形になったからです。これは、少し寂しいお話ですが、沖島の名所の一つ“RYUBOKU HAT”がコミュニティセンター新設のため取り壊すことが決定し、その屋根部分を覆っていた葦をとって左義長に入れたため、膨らみのある良い形となりました。

 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われており、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。現在は元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願をするお祭りとして、観光客の方も見に来られる、島の楽しみの一つとなっています。(下記の“冬の風物詩”でお祭りの様子をご紹介しております。)
 年々、島の生活の変化や高齢化などに伴い、沖島の伝統行事も少しずつ様変わりしてきておりますが、今年も滞りなく開催できたことに感謝をし、島の伝統行事として大切に引き継いでいきたいと思います。

 今年も『塩切り鮒の予約販売』致します♪

 毎年、ご好評をいただいております「塩切り鮒の予約販売」を今年は3月以降に開始させていただく予定です。開始日など詳細が決まり次第、ホームページ等でお知らせ致します。
 今年も漁の状況などを考慮し、昨年度に引き続き『仮予約』の受付とさせていただき、商品の発送を確約することは控えさせていただきます。何卒、ご了承下さいませ。
 この「塩切り鮒」はご家庭で手軽に“ふなずし作り”を楽しんでいただけるよう、ふなずし作りの工程で最も手間のかかる塩切り(塩漬け)までしてありますので、後は夏の土用の頃(9月頃まで可能)に漬け込みしていただけば、年末年始頃には美味しい“ふなずし”を楽しんでいただけます。
 最近は他との競合も激しくなっていますが、沖島の“塩切り鮒”は水揚げされたばかりの新鮮な子持ちのニゴロブナを傷つけないように全て手作業で仕込むので、品質には自信を持ってお届け致しております。詳しくは
「塩切り鮒の予約販売」のページをご覧下さい。

 お知らせです

◆ “沖島 桜まつり”今年も開催させていただく予定です♪

 毎年ご好評をいただいております沖島漁協婦人部「湖島婦貴の会」主催の“沖島 桜まつり”を今年も開催させていただく方向で、ただいま検討させていただいております。開催の有無など詳細は決まり次第、ホームページ等でご案内いたしますので、ご了承くださいませ。
 沖島では、春になると島のあちらこちらで桜が満開となり、“桜色の島”となります。“沖島 桜まつり”は、桜色の沖島で郷土料理に舌鼓み・・・そんなお花見を楽しんでいただけるイベントです♪

“桜のトンネル”
 昨年は桜の開花に合わせ、令和6年4月1日から2週間を“沖島桜week”とし、春ならではの沖島郷土料理などをご用意し、春の沖島を満喫していただけるよう、おもてなしさせていただきました。また、期間中の土日は“沖島 桜まつり”と称し、沖島の春の味満載のお得な“沖島 お花見セット(くじ引き付)を限定販売させていただき、大変ご好評をいただきました。
 今年も沖島の桜の季節を満喫していただけるような催しを開催させていただけたら・・・と思っております。桜色の沖島で沖島の味に舌鼓み♪・・・そんなお花見を楽しんでいただける春を心待ちにしております。

沖島の春の味“お花見セット”

昨年の新メニュー
びわ湖魚グルメ“えび豆コロッケサンド”
※沖島の桜の様子は“桜アルバム”でご紹介しています
※写真の“お花見セット”は2023年の桜まつりの時ものです。

冬の風物詩 〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜

 沖島の左義長祭り

 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
 元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
 沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
 今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。
“だんぶくろ”飾り

 年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では吉書(きっしょ)さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
 そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。
    “飾り付けされた竹”


  “広場に積み上げられた竹”

“家族で飾付けをする島民”                   
  当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
 瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
 以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです。

“島の細い道を瀛津島神社へ
上がる子供達”


 “神社の境内を回る子供達”


 “広場へと向かう子供達”
 広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。


“火を起こし左義長に火を入れます”
 
 “勢いよく燃え上がる左義長”
 獅子舞 

 島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
 この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
 その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
 現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。

  
冬の味覚

 沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
 また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
 ここでは、“わかさぎの一夜干し”“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。
◇ わかさぎの一夜干し
 
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
 一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
 “わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。

         《わかさぎの一夜干し》
◇ えび豆

  “えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
 味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。 

  ※ “えび豆”は通販でお買い求めいただけます。
     詳しくはこちらへ・・・
◇ かきもち

 “かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
 お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
 作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。

《参考文献》
・ 「沖島物語」 西居正吉 著


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