“冬”の沖島 

 2024年・冬
 沖島の冬は、寒さが厳しく、天候によって漁に出る日も少なくなります。
 
厳しい季節のなかで、島民は左義長祭り、獅子舞などの行事で一年の息災を祈り、また先人の知恵をかり保存食を作ったりして、暖かな春を待ちます。 
 


令和6年・冬の沖島から・・・

 今年は全国的に“暖冬傾向”と言われるなか、12月になっても25℃近くになる日があるなど沖島でも過去にあまり経験がないような暖冬となっています。1月下旬(24〜25日頃)に到来した寒波では沖島も20cmほどの積雪となりましたが、昨年の『最強寒波』のときのように生活動線に影響がでるようなこともなく降雪も今のところ昨年に比べ少ない状況です。それに伴い平均気温も平年に比べ1℃強高いのではないかと言われ、水温も平年値より1℃強ほど高くなっているようです。また、夏から続く琵琶湖の渇水状況も1月下旬の寒波で改善はしたものの、今だ−64cm(1/31現在)と低い状況が続いています。このような状況は少なからずもこの冬の漁に影響を与えているのではないかと思われ、昨年の夏から続く「異常気象」ともいえる状況が令和6年度の漁業に良くも悪くもどのような状況をもたらすのかは図りしれませんが、サプライズを含め良い状況となってくれることを願うばかりです。
 今年は「能登半島地震」や「飛行機事故」…と悲しい出来事が続く年明けとなりました。お亡くなりになられた方々や被災された方々に心よりお悔やみ、お見舞い申し上げます。そのような状況下ではありましたが、沖島では一年で最初の年中行事「左義長」を滞りなく行い、この一年の無病息災、五穀豊穣、大漁など祈願させていただくことができ、感謝とともに何気ない日常がどれほど尊いかを改めて実感する一年の始まりとなりました。また、沖島の冬は一年を通じて一番静かな時期ではありますが、暖かな日には観光客の方々の姿もお見受けし、なかには“沖島の味”を求めて渡って来られる方もみえるなど、以前より冬に訪れてくださる方が多くなったことにも喜びと島に活性化に繋がる励みを実感する冬ともなりました。そんな冬の沖島より、この冬の話題をいくつかお届け致します。

 夏からの異常気象はこの冬の漁にも・・・

 紅葉の時期も終わって束の間の秋が過ぎ、12月に入って“ヒウオ漁”が始まると漁の様子も冬へと移り変わって来ました。一年を通して冬は、天候により漁に出られない日が多くなったり、湖魚の習性によって漁がしづらくなるなど、一年の中で最も水揚量が少なくなる時期でもありますが、今年はそれも増して水揚量が少なく、夏から秋にかけて感じていた異常気象による「季節のずれ」がこの冬の漁でも感じざるを得ない状況となっています。


“沖島のえび豆”
 昨年(R4年)の冬、豊漁だった“スジエビ漁”はこの冬、全くと言ってもいいほど獲れていません。この秋も獲れない状況だったのですが、夏のウロリ漁の時期にプランクトン状態のスジエビを多く確認していたので獲りづらいだけで資源的にはいると思われていました。順調に気温が低下し水温も低下してくると湖魚は湖底に住処を移し集団が形成されるので漁もしやすい状況となってくることから、この冬の漁には期待をしていたのですが、たつべ漁から沖引き漁に変わっても獲れず、燃料費などの経費からみても「採算割れ」する状況となっており、スジエビ漁を生業とする漁師にとって死活問題になりかねない状況です。
 一年を通して「冬の漁」の水揚げが少なくなるのには「気圧」も関係しています。「天候が悪い(曇り、雨)」、いわゆる「低気圧」になると水蒸気が上昇するため、琵琶湖では湖底に生息していた湖魚が湖底より浮いてきてしまいます。そのため、湖魚が湖底で越冬する性質を利用して行う冬の沖引き漁では獲りづらくなってしまい、天候の悪い日が多くなる冬は水揚量も少なくなってしまうのです。しかしながら今年の不漁はもっと深刻で、天候の良い状態でも平年の天候の悪い状態での水揚量にも満たないほど獲れていない状況なのです。このことはスジエビ漁だけではなく、魚種によって差はありますが他の湖魚も平年に比べ水揚量が少なくなっている状況になっています。このようなことから、湖魚は異常気象を敏感に感じとり平年とは異なった行動パターンをとっているのではないかと思われ、異常気象は獲りづらい冬の漁を更に獲りづらいものとしてしまっているのです。

“ヒウオ(アユの稚魚)”
 一方、12月に入って11月まで禁漁期間となっている“小アユ漁”が“ヒウオ漁”として再開されした。この漁は養殖用、放流用の種苗としてアユの稚魚を獲るのが目的であり、養殖業者からの注文など今年の需要に合わせて漁獲量が計画されます。アユの稚魚は体が透きとおって見えることから“ヒウオ(氷魚)”と呼ばれています。昨年は春からの“小アユ漁”が危機的な状況だったことから注文量が達成できるか心配されていましたが、この冬は昨冬(R4年12月)より日数はかかったものの、12月14、15日頃目標量だった14tに到達し無事に漁を終えることができました。ヒウオの状態もサイズは昨冬より少し大きめでしたが、買取業者にとっても歩留りが良いものが多かったなど、全般的に良かったといえるのではないでしょうか。しかしながら、この冬のヒウオ漁は地域によって極端に差があり、湖北のほうでは極端に獲れない状況だったようです。また、地域によっては遅くにふ化したものが成長してくることを狙って1月に入ってもヒウオ漁が行われますが、今年は全く獲れなかったようです。

“こあゆ山椒入り若煮”
 このようなことから心配されるのは今年の4〜7月にかけて行われる“小アユ漁”のことです。昨冬(R4年12月)のヒウオ漁は目標量が3日間で達成できるほどの豊漁だったにも関わらず、その年の“小アユ漁”は危機的な状況と言えるほどの不漁となりました。今期は人工河川で34億粒の産卵が確認されていますが、天然河川での産卵は把握(確認)できておらず全くの未知数で、夏からの異常気象により雨が少なく河川にも水が十分ではなかったことから、産卵数は少ないのではと予測されます。また、例年“小アユ漁”が漁として成り立つには、天然による産卵と人工河川による産卵と合わせて80億粒の卵が必要だと言われています。この二つの要因を合わせて予測されるのは、今年もこの冬のヒウオ漁が良かったとは言え、今年(R6年4〜7月)の“小アユ漁”も安心はできないということです。


“わかさぎ一夜干し”
 冬に旬を迎える“ワカサギ漁”も獲れてはいますが、産卵時期に入り魚が集団にならないため一網打尽にはできないことや、今年は秋ぐちに結構獲れていたことから資源的な量は例年並みと思われましたが、現在の水揚量は少なくなっています。平成元年頃、琵琶湖に外来魚が大量に増えた時に外来魚である「ワカサギ」も増え、琵琶湖の冬の味覚として定着してきたのですが、増え始めた頃は3月頃が産卵時期だったので、冬には“子持ちのワカサギ”が獲れ冬を代表する味覚でした。しかし原因は不明ですが少しずつ産卵の時期が早くなり、最近では12月の後半頃から産卵がみられるようになりました。そのため、真冬獲れるものは子持ちではないものが多くなり“冬が旬”という認識を改めなければならない時が来るのかもしれません。

“本もろこ南蛮酢漬け”
3月頃に獲れる「ホンモロコ」は“ひなもろこ”
と言われ、子持ちで格別な味わいです♪
 また、引き続き安定している“ホンモロコ漁”は資源的にも顕著に増えている印象で、今の時期は魚が集まる場所が移動するので獲りづらい時期ではありますが、うまく目指すことができれば大漁が期待できると思います。今、水揚されているものはサイズのばらつきはありますが、大きいものはほとんどが“子持ち”です。このサイズのばらつきは最近になっての現象で、以前、琵琶湖の汚染が問題視される前に獲れていたものはサイズが揃っていたのですが、環境汚染により減少してきてしまった琵琶湖の魚を増やそうと40年ほど前に「水産振興協会」が設立され人工的に増やそうという取組みが始まりました。そのことが功を奏し資源的には増えてきているものの、この“サイズのばらつき”という現象も出るようになりました。
 これから始まる“ニゴロブナ漁”もホンモロコと同様に人工的に増やそうという取組みが功を奏し、安定してきていると思われます。今年もニゴロブナの稚魚が数多く確認されていることから親も増えていると推測され今年の水揚量も期待がされています。この“ニゴロブナ漁”も以前は人工的にふ化し放流したものが100%でしたが、現在は人工ふ化させ放流したものが成長し、親となって産卵し天然由来に育ってきているものが増えてきています。このことは放流時に「じせき」に色を付け、水揚げされたものからサンプル調査し「じせき」に色の付いた魚が親になっていることを確認し証明されています。また、天然のものが増えてきていることで人口ふ化が100%に近かったのが90から80%というように徐々に減ってきており、天然のものと人工のものの比率が変わってきています。現在は人口ふ化させたものの残存率は6〜7%となっており、このことを踏まえて放流しバランスをとっているのが現況です。

“沖島の鮒ずし”
 沖島漁協では、まだ“ニゴロブナ漁”は本格的には始めておりませんが、魚の状態が一番良い3月から始める予定をしています。3月頃のニゴロブナは成長も程よい大きさとなり卵の抱え方も良く卵の粒の大きさも一番美味しい状態となります。ここ2、3年前は不漁を心配し「塩切り鮒」用のニゴロブナを必要量確保するために2月下旬頃から漁を開始しておりましたが、ここ2、3年は安定して確保できていること、「鮒ずし手作り講習会」の樽数が未定であることおよびや買取業者の動向なども踏まえて漁の開始時期を見極めていこうと思います。

 ここまで、この冬の漁の様子を紹介してまいりましたが、秋の漁でも感じていた異常気象による影響はこの冬も否めないと感じています。琵琶湖の水温が平年値より1℃強高くなっていることや雨量が少ないことによる渇水など琵琶湖の湖魚たちは敏感に感じとり、身を守るために行動パターンを変えるなど自己防衛をしているように思います。そのことは私ども漁業者にとっても今までの経験値を活かせず漁がしづらい状況を引き起こしているのです。
 しかしながら、元を正せば、このような異常気象などを引き起こしているのも私たち人間であり、そのことを見過ごしてはいけないのではないでしょうか。この冬の琵琶湖の水位は−64cmと激しい渇水状態にあり、かつて「内湖」があった頃には起こりにくいことでした。「内湖」を埋め立ててしまったことで琵琶湖という器だけなり、雨や雪が降る降らないだけで簡単に渇水につながるようになってしまいました。「内湖」という琵琶湖周辺にあった複数の器は、本体の琵琶湖の水位の調整役に自然となっていたのではないかと今になって思います。また、水温上昇などを引き起こしている異常気象も私たちが排出する二酸化炭素による地球温暖化が引き起こしていることです。
 昨年は2月早々に確認された琵琶湖の“全層循環”も今年はまだ確認されていません。この冬は1月下旬の寒波以外、琵琶湖周辺では雪らしい雪は降っておらず、このことが全層循環にどんな影響を及ぼすか懸念されるところです。この“全層循環”は“琵琶湖の深呼吸”とも言われ、雪解け水など冷たい水が流れ込むことで湖底まで酸素を含んだ水が沈み込み循環することで生育環境が良くなるとともに、漁業にとっても好転材料をもたらしてくれます。このところ毎年順調に全層循環が起きていることから今年も何とか起きてほしいと願うばかりです。
 琵琶湖の環境改善や資源回復の取組みなどが功を奏してきている今、このような自然の営みが琵琶湖の環境に影響を及ぼしているんだということにも目を向け、向き合っていくことが肝要なのではないかと思います。そして、この琵琶湖の“息づかい”をいち早く感じることができるのは私ども琵琶湖の漁業者ではないでしょうか。これからもこの琵琶湖に寄り添い、見守り、その魅力の情報発信に務めていきたいと思います。

★ 上記の湖魚の若煮など沖島の湖魚料理は、通信販売でもお買い求めいただけます。
 ぜひ、ご賞味くださいませ。

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★“「びわ湖のさかな」をたべてみよう”のページでも琵琶湖の湖魚についてご紹介しております。ぜひ、ご覧下さいませ。詳しくはこちらから・・・“「びわ湖のさかな」をたべてみよう!” 


“後継者育成事業”・・・“指導者”交渉中です

 沖島漁協では、漁協の“後継者育成事業”の一環として、県または国が行う研修制度に「指導者」として携わらせていただいてきています。先の「秋の話題」でもご紹介いたしましたが、「沖島で刺し網漁を学びたい」という青年が研修制度に参加を希望されているのですが、未だ調整中の状態です。というのも、研修を希望されている方の意志は固いのですが、その「指導者」となる方がなかなか決まらず交渉中だからです。漁業という仕事柄、「指導者」を引き受けるということは研修生の方の命を預ることにもなり、一人前の漁師に育てるというプレッシャーもあります。また、県の研修制度は6ヶ月、国は3年と長く、年令的なことからも責任が果たせるのかという不安もあります。そのため慎重にならざるを得ないのが現状です。
 しかしながら、「指導者」という大役をなし終えた達成感は大変大きく、これからの励みともなるのではないでしょうか。県か国のどちらの研修制度に参加されるかも未だ調整中ですが、いずれにしても安全第一でお互いが尊重し合える関係性を築いていくことが大切であり、達成にも繋がっていくことだと思っております。そのような心持ちを大切にして交渉していきたいと思います。



 1月7日(日) 左義長祭りが行われました


※写真は今年のものではありません。
 今年も1月7日(日)、沖島の“左義長祭り”が行われました。今年は「能登半地震」や「飛行機事故」…と悲しい出来事が続く年明けとなりました。お亡くなりになられた方々や被災された方々に心よりお悔やみ、お見舞い申し上げます。元旦に起きた地震では沖島も震度4を観測いたしましたが、幸い目立った被害もなく、そのような状況下ではありましたが、一年で最初の年中行事「左義長」を滞りなく行い、この一年の無病息災、五穀豊穣、大漁など祈願させていただくことができ、感謝とともに何気ない日常がどれほど尊いかを改めて実感する一年の始まりとなりました。
 今年の「差義長」は、7日という過去に一番早い開催日となりましたが、お天気にも恵まれ、例年同様にぎやかな様子で滞りなく行われました。島外からは帰省されてきた方々や観光客の方もお見えになり、写真を撮ったりして楽しんでみえました。
 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われており、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。現在は元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願をするお祭りとして、観光客の方もたくさん見に来られる、島の楽しみの一つとなっています。(下記の“冬の風物詩”でお祭りの様子をご紹介しております。)
 年々、島の生活の変化や高齢化などに伴い、沖島の伝統行事も少しずつ様変わりしてきておりますが、今年も滞りなく開催できたことに感謝をし“引き継いでいく”ということを大切にしていきたいと思います。

 今年も『塩切り鮒の予約販売』致します♪

 毎年、ご好評をいただいております「塩切り鮒の予約販売」を今年は3月以降に開始させていただく予定です。開始日など詳細が決まり次第、ホームページ等でお知らせ致します。
 今年も漁の状況などを考慮し、昨年度に引き続き『仮予約』の受付とさせていただき、商品の発送を確約することは控えさせていただきます。何卒、ご了承下さいませ。
 この「塩切り鮒」はご家庭で手軽に“ふなずし作り”を楽しんでいただけるよう、ふなずし作りの工程で最も手間のかかる塩切り(塩漬け)までしてありますので、後は夏の土用の頃(9月頃まで可能)に漬け込みしていただけば、年末年始頃には美味しい“ふなずし”を楽しんでいただけます。
 最近は他との競合も激しくなっていますが、沖島の“塩切り鮒”は水揚げされたばかりの新鮮な子持ちのニゴロブナを傷つけないように全て手作業で仕込むので、品質には自信を持ってお届け致しております。詳しくは
「塩切り鮒の予約販売」のページをご覧下さい。

 お知らせです

◆ “沖島 桜まつり”今年の開催は、ただいま検討中です・・・

 毎年ご好評をいただいております沖島漁協婦人部「湖島婦貴の会」主催の“沖島 桜まつり”ですが、今年の開催につきましてはただいま検討をさせていただいております。開催の有無など決まり次第、ホームページ等でご案内いたしますので、ご了承くださいませ。
 沖島では、春になると島のあちらこちらで桜が満開となり、“桜色の島”となります。“沖島 桜まつり”は、桜色の沖島で郷土料理に舌鼓み・・・そんなお花見を楽しんでいただけるイベントです♪

“桜のトンネル”
 昨年、沖島漁協婦人部“湖島婦貴の会”では、この桜の季節を満喫していただこうと『〜沖島 桜Week〜“お花見セット”でおもてなし♪』と題し、お得な“お花見セット”を販売させていただき、大変ご好評をいただきました。

沖島の春の味“お花見セット”
 今年も、桜色の沖島でお花見を楽しんでいただける・・・そんな春が来ることを心待ちにしております。

※沖島の桜の様子は“桜アルバム”でご紹介しています
※写真の“お花見セット”は2023年の桜まつりの時ものです。

◆ 沖島の冬の風物詩 “獅子舞”

 沖島の冬の風物詩としてご紹介している“獅子舞”が、今年は2月25日(日)に行われる予定です。
“獅子舞”は、古くから伝わる沖島の年中行事のひとつで、各家庭を廻った後、漁港近くの広場で余興が行われます。詳しい内容は、下記の『冬の風物詩』のコーナーでご紹介しています。この機会に沖島へ足を運んでみませんか♪

冬の風物詩 〜〜ここからは例年の冬の沖島の様子をご紹介しています〜〜

 沖島の左義長祭り

 沖島の左義長祭りは、一人前になる行事(17才の元服)として昔から行われています。
 元服とは、かつての武士階級で、男子なら十三才から十七才までの間に行われる、今で言う成人式のような儀式で「加冠の儀」といい、それが済むと大人の仲間入りをし、一人前の武士として出陣する資格を得たそうです。
 沖島の左義長祭りは、その年に元服を迎える男子が元服を済ませた男達に様々な試練を与えられ、一人前の男として認められる、いわば…青年団に入る前の儀式のような意味合いもありました。
 今では、元服を迎える若者が毎年いないため、自治会と島の子供達が中心となり、五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて島民皆が参加するお祭、島の楽しみの一つとなっています。
“だんぶくろ”飾り

 年が明けると島全体で左義長祭りの準備が始まります。飾り付けをする竹を島民皆で集め、飾りの準備をします。男の子のいる家庭では吉書(きっしょ)さん”、女の子のいる家庭では“だんぷくろ”という飾りを作ります。この“だんぶくろ”は沖島ならではと言われており、「お裁縫が上手になりますように…」との願いを込めて一針一針、色紙を縫い合わせて作ります。
 そして、左義長祭の当日、お手製の飾りを竹に飾りつけ、広場に積み上げていきます。
    “飾り付けされた竹”


  “広場に積み上げられた竹”

“家族で飾付けをする島民”                   
  当日、公民館では、自治会と子供達が中心となり儀式を行なった後、飾り付けた竹を持って瀛津島神社へと上がります。
 瀛津島神社へ上がると、子供達は、ゆっくりと数回境内を回って神社を下り、左義長に火を入れる広場へと向かいます。
 以前は、元服する男子が瀛津島神社から下る際、行かせまいと青年団が邪魔をするなどして小競り合いをしました。神社の階段がとても急なため、島民はハラハラしながら見守ったものです。

“島の細い道を瀛津島神社へ
上がる子供達”


 “神社の境内を回る子供達”


 “広場へと向かう子供達”
 広場へ到着すると、いよいよ五穀豊穣、大漁、無病息災、勉学などの祈願を込めて、左義長に火が入れられます。その火を囲み、火が消えるまで島民の談笑が続きます。


“火を起こし左義長に火を入れます”
 
 “勢いよく燃え上がる左義長”
 獅子舞 

 島の年中行事の一つで、島の男子は、元服を済ませた翌年18才になると“獅子舞若連中”といい、伊勢大神楽講社の一行を迎えて、島中一軒一軒の“カマド払い”をします。
 この獅子舞は、鎮火守護の祈りの行事として古くから伝えられ、毎年2月から3月に行われます。午前中は各家庭を回ってお払いをしていただき、午後からは広場で獅子舞、余興が行われます。
 その見物に欠かせないのが“サト豆”というあられを砂糖で固めたお菓子です。「獅子舞の豆を食わんと良い日が来ん(春らしい日が来ない)」といわれ、今でも続く行事です。
 現在では、獅子舞若連中ではなく、決められた人が一行の送迎を行っています。

  
冬の味覚

 沖島の冬の味覚といえば、“わかさぎ”です。漁は8月下旬ころから始まりますが、冬の時期には、10〜15pほどの大きさに成長した子持ちのわかさぎが獲れます。
“わかさぎ”は骨が柔らかい湖魚で、天ぷら、南蛮漬けなどの料理に適し、また、この時期のものは子持ちなので“一夜干し”も大変美味です。
 また、この寒い時期を利用して、“お漬物”、“かきもち”などの保存食を作ります。お漬物作りは、ほとんどの家庭で行われているお正月前の年中行事のようなもので、自前の畑で採れた野菜を使って漬けます。
 ここでは、“わかさぎの一夜干し”“かきもち”、また年中食べられていますが、おせち料理の一品としても作られる“えび豆”をご紹介いたします。
◇ わかさぎの一夜干し
 
“わかさぎの一夜干し”は、塩水(水の量に対し1%の塩)にお酒を適量入れ、洗ったわかさぎを、そのまま3時間程度漬け、漬けたものを一晩、軒下等に陰干しにして作ります。
 一夜干しのわかさぎは、火が通る程度まで焼いて頂きます。海の干物とは、ひと味違う格別な味わいです。
 “わかさぎの一夜干し”は、なんといっても、わかさぎの鮮度が命です。獲れたての“わかさぎ”が手に入る沖島ならではの逸品です。

         《わかさぎの一夜干し》
◇ えび豆

  “えび豆”は、スジエビの代表的な料理で、日常的に作られますが、「腰が曲がるまでマメに暮らせますように・・・」と、おめでたい時やおせち料理のひと品としても、よく作られています。
 味・作り方は、各家庭で少しずつ違いがありますが、味は甘辛く、エビ豆の作り方の特徴として、大豆は柔らかく茹でたものを加え、エビがあまり硬くならないように短時間で炊き上げます。 

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◇ かきもち

 “かきもち”は、昔から沖島の家庭で作られている保存食のひとつです。
 お餅をつくときに海苔、黒砂糖など入れて味付けし、切れる程度に四角く固めた餅を薄く(2〜3o程度)切り、藁で編んで吊るして、3ヶ月くらい部屋の中で干します。“かきもち編み”といわれ、どの家庭でも見られた光景です。
 作り方が餅つき機を使ったり、味付けをエビマヨ味(干しえびとマヨネーズ)にしたりと、昔とは少し変わりましたが、今でも多くの家庭で作られています。

《参考文献》
・ 「沖島物語」 西居正吉 著


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